もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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細菌性腸炎とは

細菌性腸炎とは細菌感染による「感染性胃腸炎」です。

感染性胃腸炎とは病原体の腸管感染によって炎症をきたす疾患で、

  • 細菌性
  • ウイルス性
  • 寄生虫・原虫性

があり、いずれも発熱や腹痛、下痢・嘔吐が特徴です。

「細菌性腸炎」は、夏場の6~8月ごろに多く見られます。

生肉や卵の殻への付着などで、細菌が汚染されている食品等を介して、経口感染が原因になります。家族内や集団発生で感染が拡大すると、いわゆる「食中毒」といわれます。

代表的な病原菌には以下のものがあります。

サルモネラ菌 腸炎ビブリオ カンピロバクター 黄色ブドウ球菌 病原性大腸菌(O-157など)
赤痢菌 コレラ菌 エルシニア菌 ウェルシュ菌 ボツリヌス菌

 

細菌性腸炎の原因

細菌性腸炎は病原菌の腸管感染が原因です。

病原菌が主に経口的に摂取され、腸管の粘膜に侵入、あるいは表面で毒素を産生することで感染・発症します。

主な感染経路は以下の通りです。

  • 経口感染
    病原菌が含まれた食品や水を飲食することで感染

  • 飛沫感染
    感染者の吐しゃ物や便が飛び散り、病原菌が口へ侵入することで感染

  • 接触感染
    感染者の吐しゃ物や便に触れた手で口元を触ったり飲食することで感染

接触感染は「ヒト」から「ヒト」のみならず、ペットなどの「動物」から「ヒト」へ感染するケースもあります。

いずれの感染経路においても、加熱などによる十分な殺菌と、こまめな手洗いが重要です。

 

細菌性腸炎の症状

細菌性腸炎に感染すると、以下のような症状があらわれます。

  • 発熱
  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 頻回の下痢
  • 血便

細菌性腸炎は子どもから大人まで感染する可能性があり、特に乳幼児や高齢者は脱水症状など重症化のリスクがあるため注意が必要です。

また、潜伏期間や治癒するまでの期間は病原菌によって異なります。
主な病原菌の特徴について詳しく解説していきます。

カンピロバクター

食肉(特に鶏肉)に多く存在する、食中毒の原因として最も多い病原菌です。

まれに発症1〜2週間後に手足・顔の麻痺や呼吸困難を引き起こす「ギランバレー症候群」を合併することもあるため、注意が必要です。

  • 潜伏期間:1~10日
  • 治癒するまでの期間:1週間程度

サルモネラ菌

カンピロバクターに次ぐ細菌性腸炎の病原菌です。
動物や河川・下水など自然界に広く生息しており、ミドリガメなどの爬虫類をペットとして飼育している家庭での感染事例も発生しています。

また、重症化しやすい乳幼児・高齢者は、脳炎などを引き起こす「菌血症」を合併するリスクがあるので注意が必要です。

  • 潜伏期間:12~48時間
  • 治癒するまでの期間:1週間程度

病原性大腸菌

激しい下痢が特徴で、発症の仕方によって5種類に分けられる病原性大腸菌ですが、特に気を付けたいのがO-157などの「腸管出血性大腸菌」です。

腸管出血性大腸菌に罹る患者の7割は15歳未満の子どもであり、溶結性尿毒症症候群(HUS)の重篤な合併症を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。

出典:国立感染症研究所(2010)「感染症発生動向調査からみた腸管出血性大腸菌感染症における溶血性尿毒症症候群」『感染症発生動向調査週報(IDWR)』vol.32, p.170-172
https://idsc.niid.go.jp/iasr/32/375/dj375e.html

  • 潜伏期間:3~8日
  • 治癒するまでの期間:4~8日

腸炎ビブリオ

海底の泥に生息している病原菌で、生魚の体表や内臓に付着しています。

家庭で生魚を取り扱う際には、包丁やまな板、手指などに細心の注意を払う必要があります。

  • 潜伏期間:12時間程度
  • 治癒するまでの期間:3日程度

黄色ブドウ球菌

健常なヒトの常在菌であり、約2〜4割が保菌しています。化膿の原因になる病原菌としても有名です。

調理者の手指に傷などの化膿巣がある場合は、菌が移り腸炎を引き起こす恐れがあるので、手袋をはめるなど衛生管理が必要です。

  • 潜伏期間:30分~6時間
  • 治癒するまでの期間:1~2日

いずれの細菌性腸炎も通常、数日〜1週間程度で自然に症状が改善していきますが、症状が強い場合には抗生剤治療を行う必要があります。

発熱や下痢・嘔吐で、頻回の下痢や腹痛、発熱等で倦怠感が強い症状がみられたら、早めに医療機関を受診しましょう。

 

細菌性腸炎の検査・治療

細菌性腸炎が疑われる際に医療機関ではどのような検査が行われ、どのような治療が施されるのでしょうか?

診断方法から処置まで詳しく解説します。

細菌性腸炎の検査

医療機関では細菌性腸炎と疑われる症状の他に、

  • 病歴
  • 季節
  • 海外渡航歴
  • 感染経路
  • 原因となり得る摂食の有無
  • キャンプなどの行動歴
  • 発症までの時間
  • 同居家族の体調
  • 便の性状(血便など)

といった情報を総合的に見極めて診断します。

糞便検査による確定診断も可能ですが、時間(数日)を要するため、結果を聞くまでに既に治癒している場合があります。

 

細菌性腸炎の治療

細菌性腸炎の治療は、患者の自己免疫力によって自然に回復するのを待つのが一般的です。

症状が強い場合には抗生物質を使うこともありますが、基本的には「水分補給」「安静」、整腸剤などの「対症療法」で対処していきます。

なお、「下痢止め(止痢剤)」は腸管の運動を抑えて病原菌の排出を妨げ、回復を遅らせるので使用しません。

また、腸炎の症状としてあらわれている発熱に対する解熱剤は、水分や食事が摂れているようなら必ずしも使う必要はありません。

ただし重症の場合には、腸管を安静にして、脱水を防ぐための点滴、状態によっては入院が必要となることもあります。

細菌性腸炎の対処法

子どもが感染して自宅療養する際には、とにかく「水分補給」「安静」が大切です。

経口補水液(OS1)などで水分を与え、食べられるようならお粥など消化の良い食事を出来る範囲であげていきましょう。
(刺激のある食事、揚げ物などの油の多い食事、冷たい物、生ものは避けてください)

細菌性腸炎の予防

細菌性腸炎は感染症なので周囲の人にうつる可能性があります。

自宅療養中の家庭内では特に感染リスクが高いので、自宅で感染者が出た場合は二次感染を防ぐためにも、次に記す適切な感染予防が必要です。

感染予防① 手洗い・手指消毒

食事や調理の前、ペットを触った後やトイレ・汚物処理の後など、こまめな手洗いが大切です。

手洗いは流水で30秒以上しっかりとこすり洗いをするようにしましょう。
手指消毒にはアルコール消毒が有効です。

感染予防② 適切な汚物処理

感染者の汚物処理を行う際には、細心の注意を払う必要があります。

使い捨てのエプロン・マスク・手袋を着用の上、病原菌が飛散しないようにペーパータオルなどで静かに拭き取ります。
その後、ハイターなどを薄めた次亜塩素酸ナトリウム消毒液(0.02%)でよく拭いてから、さらに水拭きをします。

汚物が付着した衣類を洗う際には、汚物をふき取り、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いし、次亜塩素酸ナトリウム消毒液(0.02%)に30分程度漬けてから洗濯機で洗います。
(汚物が付いた衣類と、他の洗濯物は分けて洗うようにしましょう。)

また、ソファーなど洗濯できないようなものには、軽く濡らした布を当てた上にスチームアイロンをかけるのも効果的です。

防護を着脱する際には、エプロン、手袋、マスクの順に外し、マスクを外す時はなるべく指が顔に触れないように外しましょう。

また、最後にしっかりと手洗い・手指消毒することも大切です。

公益社団法人日本食品衛生協会 
食品衛生情報 http://n-shokuei.jp/eisei/index.html
食中毒菌などの話 http://n-shokuei.jp/eisei/sfs_index.html

 

こんな時は病院へ

細菌性腸炎は子ども(特に乳幼児)や高齢者は重症化リスクがあり、脱水症状・ギランバレー症候群・菌血症など合併症の危険もあります。

以下のような症状がみられたら、速やかに医療機関を受診してください。

  • 嘔吐や下痢でぐったりしている
  • 高熱が続く
  • ミルクを飲まない
  • 激しい腹痛が続く
  • 血便が続く

また受診するにあたって、

  • 飲水量
  • 摂食量
  • 下痢・嘔吐の回数
  • 尿の頻度

などを記録しておくと診断に役立ちます。

 

まとめ

ここまで細菌性腸炎についてお伝えしてきました。

細菌性腸炎の要点をまとめると以下の通りです。

  • 細菌性腸炎の症状には発熱・腹痛・下痢・嘔吐などがある
  • 生肉や生魚、不衛生な水、ペットなど動物の菌による腸管感染
  • 冬に流行するウイルス性とは対照的に、菌が繁殖しやすい夏に多い傾向にある
  • 治療に「下痢止め」は使用せず、「水分補給」と「安静」が大切
  • 二次感染予防の手洗い・手指消毒、適切な汚物処理が必要

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。