2023/02/18
マイコプラズマ感染症とは
マイコプラズマ感染症は「Mycoplasma pneumoniae」という病原体によって引き起こされる呼吸器感染症です。
小児や若年層の肺炎の原因として比較的多い感染症の1つで、潜伏期間は2〜3週間と長いです。
症状は発熱や乾いた咳が長引くことが特徴です。
マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられます。
4年ごとに流行することも知られています。
オリンピックイヤーに流行すると言われていますが、そのような実感はありません。
マイコプラズマ感染症の原因
マイコプラズマ感染症は風邪と同じような感染経路を辿り、以下のような経路で感染します。
- 飛沫感染
感染者の咳やくしゃみによって飛散した病原体を吸入することで感染 - 接触感染
病原体が付着した手で目・口・鼻などの粘膜を接触することで感染
感染力は風邪ほど強くはありませんが、保育園・学校・家庭内など集団生活の場で流行するケースが多くみられます。
マイコプラズマ感染症の症状
マイコプラズマ感染症について、症状や潜伏期間などを詳しく紹介していきます。
症状や特徴に心当たりがある方は受診の目安にしてください。
マイコプラズマ感染症の潜伏期間は一般的に2~3週間程度です。
潜伏期間とは「感染」してから「発症」するまでの期間のことを指します。
潜伏期間が3日程度の風邪やインフルエンザと比べ、マイコプラズマ感染症は潜伏期間が長いのが特徴です。
マイコプラズマが地域ごとに流行する原因には、この潜伏期間の長さが大きく関係しています。
マイコプラズマ感染症の症状
マイコプラズマ感染症には、
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- 咽頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
- 乾性咳嗽
などの症状があります。咳は他の症状より数日遅れて始まることが多く、解熱後も3〜4週間続くのが特徴です。
発症初期には痰を伴わない乾いた咳ですが、次第に痰が絡んだ咳へと変わり、夜にひどくなる傾向にあるようです。
小中学生の肺炎の代表的な原因です。
成人や、乳幼児でも感染するケースがあります。
しかし、一部では「肺炎」を併発し重症化することもあるため注意が必要です。
熱や咳が長引いて、「元気がない」「食欲がない」といった様子が見られた際には、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎とは病原体(マイコプラズマ)の感染が肺にまでおよび、炎症を起こしてしまう呼吸器疾患です。
急性上気道炎で終わることも、気管支炎や肺炎になることもあります。
マイコプラズマ感染症は若年に多く、感染者の80%が15歳以下で、60歳以上の感染者は少ない傾向にあります。
中でもマイコプラズマ肺炎になるのは、感染者全体の3〜5%程度といわれています。
(厚生労働省「マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改訂」)
マイコプラズマ肺炎は、長引く咳の症状やレントゲンに写る肺炎像の見た目ほどの肺雑音などの理学所見が乏しいため、「異型肺炎」ともいわれています。
入院の必要がなく、通院で済む場合も多いです。
マイコプラズマ肺炎の症状には、
- 乾いた咳が続く
- 熱が下がらない
といった特徴があります。
以上の症状がある場合はマイコプラズマ肺炎が疑われますので、すぐに医療機関を受診しましょう。
また、マイコプラズマ肺炎は一度罹っても免疫が十分にできないため、繰り返しかかることがあります。
オリンピックの開催のように、4年ごとに流行すると言われております。
マイコプラズマ感染症の検査・治療
マイコプラズマ感染症が疑われる際には、どのような検査で診断されるのでしょうか。
また、どのような治療が行われるのでしょうか。
詳しく紹介していきます。
マイコプラズマ感染症の検査
検査は主に以下の3種類の方法で行われます。
- 血液検査(抗体検査)
- DNA検査
- 迅速検査
「血液検査」は初期段階で陽性判定が出ることが少ないため、初期(急性期)・後期(回復期)の2度にわたって採血することが理想的です。
「DNA検査」は最も精度の高い確定診断方法ですが、費用が高いうえに時間もかかるといったデメリットがあります。
「迅速検査」は綿棒で喉から組織をぬぐいとり、専用キットで検査する方法で、15分ほどで結果が出る最も簡易的な検査ですが、感度が低いといった欠点もあります。
医療機関やケースによって採用される検査方法は異なりますが、一般的には「迅速検査」を採用している医療機関が多いようです。
また、マイコプラズマ肺炎の併発が疑われる場合はレントゲン検査が行われることもあります。
マイコプラズマ感染症の治療
マイコプラズマ感染症による炎症が上気道に留まっている場合や、軽度の気管支炎の場合は安静にしていれば自然に軽快することがほとんどです。
発熱・咳・頭痛などの症状がひどい場合や、検査で「マイコプラズマ肺炎」と診断された際には、
- 抗生物質
- 解熱剤
- 鎮咳薬
による治療が行われます。
脱水症状を引き起こしていたり、全身状態が悪いと判断された場合には、点滴や1週間程度の入院による専門的な治療が必要な場合もあります。
治療に用いられる抗生物質の中でも、一般的な細菌性肺炎に使用される抗生物質(ペニシリン系)はマイコプラズマ感染症には効果がありません。
マイコプラズマ感染症の治療には一般的に「マクロライド系」の抗生物質が第一選択で使用されます。
しかし近年、マクロライド系の抗生物質が効かない「耐性菌」が増えてきており、投与48~72時間以内に解熱しない場合は、
- トスフロキサシン(8歳未満)
- テトラサイクリン系(8歳以上)
といった、違う種類の抗生物質が投与されます。
※小児(8歳未満)の場合は、骨や歯の発育への影響からテトラサイクリン系は原則禁忌です。
登園・登校目安
厚生労働省の感染症対策ガイドラインでは、登園・登校目安を「発熱や激しい咳が治まっていること」としています。
しっかりと治らないまま登園・登校させると、症状の悪化・長期化を招くばかりか、第三者へ感染させてしまう可能性がありますので慎重に判断しましょう。
食事や夜間の睡眠がいつも通りに出来る状況になるまではしっかりと治療し、体力が回復できるように療養しましょう。
マイコプラズマ感染症の合併症について
マイコプラズマ感染症の合併症は「マイコプラズマ肺炎」だけではありません。
具体的には以下のような合併症があります。
髄膜炎 |
脳炎 |
末梢性神経炎 | 心筋炎 | 心膜炎 |
蕁麻疹 | 肝機能障害 | 膵炎 | 関節炎 | 腎炎 |
これらの合併症は稀でありますが、感染を契機にして、その他さまざまな疾患に発展する可能性があります。
マイコプラズマ感染症が疑われる場合には、放置したり自己判断で薬を服用したりせず、まずは医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
ここまでマイコプラズマ感染症についてお伝えしてきました。
マイコプラズマ感染症の要点をまとめると以下の通りです。
- 感染経路は風邪と同様に「飛沫感染」と「接触感染」
- 潜伏期間は2~3週間で、症状は「発熱」「頭痛」「倦怠感」「咳」など
- 咳は3~4週間程度続くことが多い
- 登園・登校目安は「発熱や激しい咳が治まっていること」
- 肺炎のほか、合併症の可能性があるため注意が必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。