もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症とは

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症とは、1〜3歳の乳幼児が罹患することが多い呼吸器感染症です。

あまり聞き馴染みのないヒトメタニューモウイルス(hMPV)ですが、日常感染症の一つです。

ヒトメタニューモウイルス感染症は毎年3〜6月頃に流行し、小児の風邪症状の5〜10%、大人の風邪症状の2〜4%を占めると考えられています。

感染すると咳や鼻水、発熱といった風邪の症状が1週間程度続くとされています。

多くの場合、1週間程度経過すると症状が回復へと向かっていきますが、乳幼児や高齢者では肺炎になるなどの重症化する場合があります。

 

ヒトメタニューモウイルス感染症の原因

ヒトメタニューモウイルス感染症は、「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」に感染することで発症します。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年にオランダで発見された比較的新しいウイルスで、呼吸器に感染症を引き起こします。

感染経路は主に以下の2つです。

  • 飛沫感染
    感染者の咳やくしゃみで、飛散した空気中のウイルスを吸い込むことにより感染する。

  • 接触感染
    ウイルスが付着したもの(おもちゃ、ドアノブ、机など)に直接触れることで、目や口を介して感染する。

保育園などの集団生活の場で集団発生を起こすことが多いです。
また、高齢者では介護施設での集団感染の報告もあります。

 

ヒトメタニューモウイルス感染症の症状

ヒトメタニューモウイルスの潜伏期間は3〜6日、発熱期間は5日前後といわれており、感染すると以下のような症状があらわれます。

発熱
鼻水 下痢 嘔吐
喘鳴 息苦しさ 頭痛

無症状のケースもありますが、「上気道炎」、つまり風邪のような症状がほとんどです。
7〜8%の方に下痢や嘔吐といった消化器系症状、60%の方に喘鳴(ぜんめい)や息苦しさといった症状があらわれます。

※喘鳴:呼吸がヒューヒュー・ゼーゼーすることを指します。

RSウイルス感染症に似た症状を起こします。
また、「急性胃腸炎」や「インフルエンザ」と似た症状の時もあります。

感染が下気道まで及ぶと「気管支炎」「肺炎」を起こしたり、水分が摂れずに「脱水症状」になる可能性もあります。

合併症として、

  • 喘息性気管支炎(36.8%)
  • 中耳炎(15.8%)
  • 肺炎(14%)
  • 喘息の症状(8.8%)
  • 熱性けいれん(3.5%)

などが報告されています。(Human Metapneumovirus Infection in Japanese Children より)

 

ヒトメタニューモウイルスの治療法

ウイルス感染症において、

  • 安静・休養
  • 水分補給
  • 感染拡大防止

以上の3つは、感染症治療(予防)の基本です。

ところで、ヒトメタニューモウイルス感染症に特効薬は存在するのでしょうか。

また、子どもがヒトメタニューモウイルス感染症になってしまったら、幼稚園・保育園はいつまで休めばよいのでしょうか。

ヒトメタニューモウイルスの検査

ヒトメタニューモウイルスの検査は、綿棒で鼻の奥の粘液を採取して行う迅速検査です。
インフルエンザ同様に保険診療で認められた検査です。

医師が検査結果と症状を総合的に判断したうえで、「ヒトメタニューモウイルス感染症」と診断します。

子どもがヒトメタニューモウイルスだとわかったら

残念ながら、ヒトメタニューモウイルス感染症に治療法や特効薬はありません。
一般的には咳止めや解熱剤など、症状を緩和させる対症療法が行われ、自宅療養をしながらの経過観察となります。

しかし、以下の状態になった場合には、再受診や入院が必要になるので注意が必要です。

熱が下がらない  経過観察において、熱が4〜5日以上つづく場合は細菌感染症の合併が考えられます。
「肺炎」や「中耳炎」の可能性を考慮して抗菌薬を服用する必要があります。
呼吸困難  喘鳴が悪化し、呼吸数が1歳未満で50回/min、1〜5歳で40回/minを超える場合は要注意です。
さらに、息を吸う際に小鼻が開く「鼻翼呼吸」や、肩が上下する「肩呼吸」の状態がつづく場合は、再度小児科を受診しましょう。
中耳炎 

ヒトメタニューモウイルス感染症の合併症の1つが「中耳炎」です。
中耳炎は、症状が軽快傾向の頃に起こりやすいといわれています。
解熱後に再発熱したり、機嫌が悪くなるなど、子どもの様子が変わったら注意しましょう。

呼吸器疾患

気管支喘息がある子どもは発作を起こしやすいという報告があり、特に注意が必要です。
また、気管支炎や肺炎など、症状が重症化した場合には入院治療(輸液、酸素投与、吸入など)が必要になる場合もあります。

    いつから登園できる?

    インフルエンザや風疹は、厚生労働省によって出席(登園)基準が定められています。
    一方で、ヒトメタニューモウイルス感染症には明確な基準はありません。

    日本小児科学会は学校・保育施設における感染予防のガイドラインで、
    「咳などの症状が安定した後、全身状態のよい者は登校(園)可能であるが、手洗いを励行する。」
    という内容を、登園基準として記載しています。

    ヒトメタニューモウイルスに関する規定についてはそれぞれの施設にも確認する必要がありますが、風邪と同様「熱が下がれば登園可」としている所が多いようです。

    しかし、回復が不十分なまま登園してしまうと、治りが遅くなるばかりか他の園児にうつしてしまう危険性もあるため、慎重な判断が要されます。

    ウイルスの排泄は、発熱1〜4日目に最も多いといわれています。
    しかし、解熱後はウイルスの排泄はほとんどないといわれています。そのため、解熱し症状が改善したら登園可能と考えてよいでしょう。

    ヒトメタニューモウイルスは大人でも発症する?

    ヒトメタニューモウイルスは大人にも感染します。
    したがって、子どもが発症した際には感染を拡げないための対策が必要です。

    子どもとの症状の違いや、感染予防のポイントについてご紹介します。

    大人が発症した場合の症状

    大人がヒトメタニューモウイルスに感染した場合も、子どもと同様に以下の症状があらわれます。

    発熱
    鼻水 下痢 嘔吐
    喘鳴 息苦しさ 頭痛

    しかし、様々なウイルス感染症を経験してきた大人は子どもに比べ免疫力が高いため、症状は比較的軽い傾向にあります。

    健康な大人は重症化することが少ないといわれています。

    しかし、高齢者気管支炎や肺炎など、下気道感染による重症化リスクが高くなります。

    実際に高齢者施設の集団感染による死亡事例も発生しています。そのため、高齢者がいるご家庭では注意が必要です。

    出典:高齢者施設におけるヒトメタニューモウイルス感染症集団発生疑い事例

    予防のポイント

    感染症予防においては、

    (病原体を)

    1. 持ち込まない
    2. 持ち出さない
    3. 拡げない

    というものが原則です。
    出典:厚生労働省【感染対策の基礎知識】

    病原体を持ち込まない・持ち出さないための「手洗い」は最も効果的な予防法の1つです。

    また、病原体を拡げないための対策として、

    • 咳エチケット
    • 換気
    • 消毒
    • 嘔吐物、排泄物を扱う際の防護
    • 重症化リスクがある人との接触を避ける

    などは、ご家庭でも可能な感染対策です。

    大切な家族を守るためにも、できる限りの対策を行いましょう。

    まとめ

    ここまでヒトメタニューモウイルス(hMPV)についてお伝えしてきました。

    ヒトメタニューモウイルスの要点をまとめると以下の通りです。

    • ヒトメタニューモウイルスは子どもが感染しやすい身近なウイルス
    • 風邪と似た症状だが、肺炎に重症化する危険性もある
    • 一般的には、症状が安定したら登園可能
    • 大人にも感染するため、感染対策を徹底する

    これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

     

    <参考文献>

    当初, 肺炎球菌が疑われた高齢者施設でのヒトメタニューモウイルス(hMPV)による集団感染事例―神戸市

    (IASR Vol. 40 p144-145:2019年年8月号)