2024/12/24
突発性発疹について
突発性発疹は乳幼児が日常的に経験する感染症の一つで、3歳までに多くの子が経験します。
比較的軽症と言われている疾患ですが、時には症状が強かったり、熱性けいれんを伴ったり、急性脳炎の重症な合併症が起きる場合もあります。
本記事では突発性発疹について、以下の点を中心に解説します。
- 突発性発疹の症状と感染経路
- 突発性発疹によって発症する合併症
- 熱性けいれんが起きた時の対応
突発性発疹を自宅で看護する場合、全身状態に気を配る必要があります。
記事の後半では自宅での経過観察時の対応や、早急に医療機関の受診が必要な場合をまとめているので、ぜひ最後までお読みください。
突発性発疹とは
突発性発疹は、乳幼児がヒトヘルペスウイルス6型、7型に感染して発症するウイルス感染症です。
以下で症状と感染経路を説明します。
症状
突発性発疹は、感染して症状が現れるまでの潜伏期間は9日〜10日ほどです。
38℃以上の発熱が3日〜5日間ほど続いたあと、解熱とともに全身に小さな紅斑や紅色丘疹が広がります。
時には、解熱前の発熱中に発疹が出現することもあります。
生まれて初めての発熱である事や、発熱が持続してインフルエンザ等の他の感染症との鑑別が必要になる事があり、熱源精査で入院加療が必要なこともあります。
発疹は2日〜3日で消失しますが、発熱、発疹の症状以外にリンパ節腫脹、大泉門膨隆、下痢などを伴う場合もあります。
感冒等が併発し、咳や鼻汁などの症状がみられることもあります。
突発性発疹様の経過を取る他のウイルス感染症も多くあり、鑑別診断が必要になる事もあります。
保険適応されている検査はありませんので、臨床症状で診断をおこないます。
感染経路
突発性発疹は、病原体ヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)、7型(HHV7)に初感染して以降は潜伏感染状態になります。
既感染者の唾液にウイルスが常時排泄されているため、親から子への水平感染が主な件線経路と考えられています。
季節による流行性は認められていません。
そのため、突発性発疹の報告数は年間を通してほぼ同じになっています。
突発性発疹の初感染年齢は年長化している
従来では、生後6ヵ月〜1歳で好発し、突発性発疹の病原体ウイルスに初感染すると考えられ、3歳までに8割程度の子が感染します。
突発性発疹の初感染年齢が年長化すると、部分的な症状であることが増えて、典型的な経過ではなくなります。
突発性発疹によって発症する合併症
突発性発疹は比較的軽症の疾患ですが、発熱時に熱性けいれんを伴う場合や、脳炎、脳症、肝炎などの合併症を稀に併発する可能性があります。
小児脳炎脳症は、原因が特定されない例も多いですが、インフルエンザウイルスである場合が大半で、続いて突発性発疹の病原ウイルスでもあるヒトヘルペスウイルス6型でした。
熱性けいれんが起きた時の対応
突発性発疹は突然38℃以上の発熱の症状が現れるため、1から2歳の乳幼児は熱性けいれんを起こしやすい傾向にあります。
熱性けいれんは、意識障害や手足をガクガクさせたり、手足を硬直させる発作が起こったりして、多くは2分〜3分程度で治まります。
熱性けいれんが起こった際には、けいれんの時間と体の動きを観察し、余裕があれば動画で記録しましょう。
病院を受診した時に、可能であれば意識の有無や顔色、発作の持続時間、発作に左右差はないかなどの様子をお伝えできればけいれんの評価や医師の診断に役立ちます。
ただし、熱性けいれんの発作が5分以上続く場合は、自然に発作が止まる可能性は低いため、救急要請を行うなどの方法で早急に医療機関を受診しましょう。
また、嘔吐することがあるため、吐物を喉に詰めないように、衣服をゆるめて横向きの体勢を確保しましょう。
子どもが熱性けいれんを起こした時のホームケアについては、以下ページにて詳細を掲載しておりますので、併せてご確認ください。
子どもがけいれんを起こした時のホームケア
突発性発疹の治療方法
突発性発疹の治療方法と、経過観察中に医療機関の受診が必要な場合を以下で説明します。
発熱等のホームケア
突発性発疹は合併症を併発しなければ予後が良好な疾患のため、治療方法は対症療法による経過観察です。
38℃以上の発熱が3日ほど続くため、インフルエンザなどの有熱性の感染症との鑑別が必要になり、発熱が2日以上続くときは、医療機関を受診されてください。
発熱が長引いて、元気がない時は、午前中に診察を受けましょう。時間に余裕があるため、必要な検査や病院への紹介が円滑になります。発熱の対処は一般的なホームケアで対応しましょう。
手足が冷たかったり、寒気があったりする場合は保温を心掛けましょう。
食欲も低下しているため、出来る範囲で食事や水分を与えて、栄養補給のサポートをしてあげてください。
解熱に伴って発疹が現れますが、かゆみはないため経過観察可能です。数日で消退して、跡を残しません。
子どもが発熱した時のホームケアについては、以下ページにて詳細を掲載しておりますので、併せてご確認ください。
子どもが発熱した時のホームケア
早急な医療機関の受診が必要な場合
突発性発疹が疑われる場合で、早急な医療機関の受診が必要な場合は以下の通りです。
- 熱性けいれんが5分以上続く場合
- 意識障害が認められた場合
- 頻繁な嘔吐や下痢がある場合
意識状態や熱性けいれんの持続時間によっては、重篤な合併症を併発する可能性がありますが、解熱してから発疹がでて診断されるために、事前の突発性発疹の予測は難しいです。
突発性発疹は指定医療機関による届出が必要
突発性発疹は5類感染症に分類され、小児科定点報告対象の疾患です。
指定届出機関の管理者は、突発性発疹の疑いが持たれる5歳未満の患者の症状に、以下の臨床症状が認められた場合、保健所に週単位の届出が行われています。
- 突然の発熱が2日~4日続いている
- 解熱の前後に体幹部や両手足、顔に発疹が認められる
指定届出機関は、全国に約3,000箇所ある小児科が対象になっています。
まとめ
ここまで突発性発疹についてお伝えしてきました。
突発性発疹の要点をまとめると以下の通りです。
- 突発性発疹は、突然の発熱と解熱に伴って全身に発疹が現れるウイルス感染症
- 3歳までに多くの子はHHV6やHHV7に感染する。
- 予後が良好な疾患ですが、まれに熱性けいれんの合併や、急性脳症の重篤な合併症を起こすことがある。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献