2024/08/30
目次
手足口病・ヘルパンギーナについて
夏風邪として知られている手足口病とヘルパンギーナは日常感染症の一つです。
5歳以下の乳幼児が感染しやすく、毎年ウイルス型が変わりながら、夏に流行します。
特に今年(2024年)は全国的に大流行を起こしました。
本記事では手足口病とヘルパンギーナについて、以下の点を中心に解説します。
- 手足口病とヘルパンギーナの感染状況
- 手足口病とヘルパンギーナの症状の違い
- 手足口病とヘルパンギーナの治療方法
手足口病とヘルパンギーナの大部分は軽症な経過をたどります。
しかし、原因となるエンテロウイルスは無菌性髄膜炎や、急性脳症・脳炎などの重篤な疾患を起こすこともあります。
それぞれの症状や予防方法を正しく理解しておくと、万が一感染した場合に役立つでしょう。
ぜひ最後までお読みください。
手足口病とヘルパンギーナの感染状況
手足口病とヘルパンギーナの病原体は、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属するエンベロープをもたないRNAウイルスです。
5歳以下の乳幼児が感染しやすく、主に5月〜7月ごろに流行する夏風邪の一つとして知られています。
手足口病とヘルパンギーナの患者数増加と2024年の大きな流行
手足口病とヘルパンギーナは夏頃に流行する感染症ですが、2020年に新型コロナウイルス感染症が流行して以降、例年と比較すると感染件数が減少していたものの、2023年の感染件数は増加傾向にあります。
社会活動の再活発化の影響、免疫を獲得していない乳幼児が増えた影響などが考えられ、2024年も手足口病とヘルパンギーナは更に全国的に大流行を起こしました。
手足口病とヘルパンギーナの感染経路
手足口病とヘルパンギーナの感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染や接触感染です。
同じ空間で生活していると家族は大方感染します。
しかし、発病するかは、それぞれの体力や免疫状態で違いがあります。
さらに、症状が回復した後も便によるウイルスの排出が 2週間〜4週間と長期にわたりますが、衛生的な処置をすると感染源にはならないと思われます。
病原体のウイルスの型も複数あり、流行の最中でも別の型のウイルスが出現したり、ウイルスの型が変化することによって、再び手足口病やヘルパンギーナに罹患する恐れがあります。
5歳以下の乳幼児が感染しやすい手足口病とヘルパンギーナですが、特に1歳以下の乳幼児の感染が多く報告されています。
兄弟などの家族内感染や、保育園等での集団生活の場での感染伝播が大きな原因となっています。
手足口病とヘルパンギーナの違い
手足口病とヘルパンギーナは、エンテロウイルス属に属するウイルスが原因で発症し、どちらも発疹が現れます。
口の中の口内炎が主な症状の場合はヘルパンギーナの診断で、口の他に手足に発疹、時にはお尻に発疹がある場合は手足口病の診断になります。
手足口病の症状
手足口病はエンテロウイルス属に属する、コクサッキーウイルスA群6型(CA6)、16型(CA16)、エンテロウイルス71型(以下EV71)などが原因です。
毎年、違う型のウイルスが変異を繰り返しながら、季節性に流行します。
潜伏期間は3日〜5日で、口腔粘膜や手、足などに水疱性の発疹が現れます。
コクサッキーウイルスA群6型(CA6)では、手足口病を発症して数週間後に爪の脱落が起こる症例もあります。
発熱は、2-3日で解熱することが多く、39度以上の高熱が出る時もありますし、38度以下の微熱の場合もあります。
発疹は2-3日がピークで、7日ほどで消えます。
基本的に予後は良好とされていますが、過去に、東南アジアでエンテロウイルス71型(以下EV71)が原因の場合、髄膜炎や脳炎などの中枢神経系合併症のアウトブレイクがありました。
死亡例も報告されているため、注意が必要です。
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナはエンテロウイルス属に属する、コクサッキーウイルスA群(CA)が主な原因ウイルスで、2、3、4、5、6、10型などの血清型が分離されます。
その他に、コクサッキーウイルスB群(CB)、エコーウイルス、エンテロウイルス(68〜71 型)など、ヘルパンギーナの病原体は多岐に渡り、流行する型は定まっていません。
2日〜4日の潜伏期間を過ぎると、発熱と咽頭痛が起こります。
さらに、喉の粘膜が赤くなり、口腔内の軟口蓋から口蓋弓にかけて皮膚が部分的に充血して赤く見える紅暈に囲まれた小水疱が現れます。
小水疱が破れると浅い潰瘍状になり、痛みを伴います。
発熱は2日〜4日ほどで治まり、粘膜の発疹も解熱後に消失していきます。
発熱中は熱性けいれんを伴ったり、口腔内の痛みによって不機嫌になり食事を拒んだり、哺乳障害が起こる可能性があり、脱水症状への注意が必要です。
手足口病・ヘルパンギーナの治療方法
手足口病とヘルパンギーナの治療方法と予防方法をご説明します。
症状に合わせた対症療法
手足口病とヘルパンギーナには専用の治療方法はなく、発熱時に解熱剤を用いたり、発疹による痒みにはかゆみ止めのクリームを用いたりするなどの対症療法が基本になります。
罹患後に皮ふの皮がむける(皮膚落屑)こともあり、保湿剤でのスキンケアも大切です。
発疹を搔き壊して、化膿すると、伝染性膿痂疹(とびひ)になりやすいです。
夏の暑い中、高熱でご飯が食べられず、水分も取れずに脱水になるのが一番辛いとされてます。
脱水が強くて入院加療が必要になるケースもあります。
口腔内にできる水泡の影響で食事が取りにくいため、卵豆腐や茶わん蒸しのような柔らかく薄味ののど越しが良い食事にするなどの工夫や、脱水症状にならないように水分補給を心掛けるようにしましょう。
予防には手洗いと咳エチケットが大切
手足口病とヘルパンギーナは、飛沫感染や接触感染によって発症するため、予防には手洗いと咳エチケットが大切になります。
咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチなどで口と鼻を覆って行い、マスクをするなども有効です。
さらに、手洗い後はアルコールを含んだ消毒液を手にすり込むと予防に繋がります。
手足口病・ヘルパンギーナの届出
手足口病とヘルパンギーナは5類感染症定点把握疾患に該当するため、小児科定点の医療機関から、保健所等に患者の年齢と性別、発生数の届出が週単位で行われています。
小児科定点医療機関の医師が届け出る基準
手足口病とヘルパンギーナの届出は、小児科定点医療機関の医師が症状や所見から診断した場合に行います。
手足口病の届出が必要になる臨床症状は、手のひらや足の裏または足の甲、口腔粘膜に2〜5mmほどの水泡が現れ、水泡はかさぶたを形成せずに治癒が認められた場合です。
一方、ヘルパンギーナは、突然の高熱による発症であることと、口蓋垂周りに水疱疹や潰瘍、発赤が現れる2つの臨床症状を満たしている場合になります。
登園・登校の判断方法
手足口病とヘルパンギーナの主な症状は軽症疾患のため、学校保健で集団感染を防ぐ目的で登園・登校許可は必要ではありません。
発熱がなく、食事が摂れる状態にまで回復してからが登園・登校の目安になります。
発症2-3日は感染力もあり、無理せずに自宅で療養してからの登園・登校が望ましいです。
まとめ
ここまで手足口病とヘルパンギーナについてお伝えしてきました。
手足口病とヘルパンギーナの要点をまとめると以下の通りです。
- 手足口病とヘルパンギーナは、5歳以下の乳幼児が感染しやすく、主に夏頃に流行する
- 手足口病は基本的に軽症な疾患だが、高熱や口内炎などで咽頭痛が強く経口摂取が難しいと、脱水になりやすい
- 症状が回復した後も、スキンケアが大切である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献