2022/08/06
目次
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンは、一度の接種でジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ(急性白髄炎)、Hib(インフルエンザ桿菌B型)の病気が予防できるワクチンです。
そこで、本記事では五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンについて以下の項目を中心に解説していきます。
- 五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの対象となる感染症とは
- 五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの効果とは
- 五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種回数・時期について
- 三種混合ワクチンの任意接種について
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの費用についても解説しておりますので、ぜひ最後までお読みください。
また、もりのぶ小児科では、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種を行っています。
下記のボタンよりお気軽にお問い合わせください。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンとは
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンとは、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ(急性灰白髄炎)、Hib(インフルエンザ桿菌B型)を予防するワクチンです。
従来、三種混合(DPT)ワクチンと経口ポリオワクチンが定期接種で使用されておりました。
また、2012年に経口ポリオワクチンから、不活化ポリオ(IPV)ワクチンに変更されました。
同年に、四種混合(DPT-PV)ワクチンが定期接種に導入されました。
2024年に五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンが導入され、四種混合ワクチンが順次終了していくことになります。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの対象となる感染症について
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの対象となる感染症は、以下の5つです。
- ジフテリア(Diphteria)
- 百日せき(Pertussis)
- 破傷風(Tetanus)
- 不活化ポリオ(Polio)
- インフルエンザ桿菌B型(Hib)
ここからは、上記の感染経路・症状について解説していきます。
ジフテリア(Diphteria)
ジフテリアは、ジフテリア菌による感染症でのどや鼻の症状がでます。
扁桃・咽頭ジフテリアは、扁桃周囲に厚い偽膜が形成されます。
喉頭ジフテリアは、嗄声や犬吠様咳嗽が重篤になり、呼吸困難を認め、気道閉鎖で死に至ることがあります。
日本では、1999年を最後に患者報告がされておりません。
海外においては、ベネズエラなどの南アメリカ大陸などで患者発生がみられ、ジフテリアトキソイドを含むワクチン(DPTやDTワクチンなど)の接種率が低い地域では流行的発生がみられ、輸入感染症、海外旅行者、海外在住者が気を付ける感染症の一つになっています。
感染後、すべての方に症状が出るということではなく、感染者の約10%の方に症状が現れます。
百日咳(Pertussis)
百日咳は、百日咳菌やパラ百日咳菌による感染症で、咳やくしゃみといった飛沫によって感染します。
約7~10日間の潜伏期間があり、感染初期の症状は普通の風邪のような症状です。
次第に咳がひどくなり、咳が止まらなくなります。(痙咳期)
また、咳が連続的におき(スタッカート)、咳のあとに吸い込む息が、ヒューヒューと笛のような音(whooping)になります。
これらを繰り返し起こし、レプリーゼ(Reprise)咳が原因で眠れなくなったり、チアノーゼになることもあります。
肺炎やけいれん、脳症などの重大な合併症を引き起こすこともあり、新生児や乳児にとって致命症になる感染症です。
小中学校や高校、大学生での百日咳の流行があり、0〜1歳代で受けた予防接種だけでは、長期的な免疫の維持に限界があり、流行を抑えられないという課題があります。
百日咳について以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
▶︎百日咳とは?症状や治療方法、ワクチンについて解説
破傷風(Tetanus)
破傷風は、破傷風菌が出す毒素が体内に入ることによって感染します。
破傷風菌は、土壌中に存在し、小さな傷口から体内に入ることによって感染し(経皮感染)、体内で毒素を産生します。
人から人へ感染することはありません。
潜伏期間は3日~3週間で、主な症状は、口をあけにくい、身体の痛み、全身のけいれんがあります。
治療が遅れ重症化すると、呼吸困難や神経麻痺を引き起こし、死に至ることもあります。
不活化ポリオ(Polio)
ポリオとは、ポリオウイルスによって感染し、四肢に非対称性の弛緩性麻痺を起こします。
主な感染経路は経口感染、接触感染、飛沫感染です。
日本では、1980年の患者報告を最後に症例は出ていません。
しかし、生ワクチン由来のウイルス(VDPV)からのワクチン感染麻痺例(VAPP: Vaccine-Associated Paralytic Polio)の患者報告がありました。
生ワクチンから不活化ワクチンに変更となってからは、患者報告はありません。
不活化ポリオワクチンについて気になる方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【医師監修】不活化ポリオワクチンIPVの基礎知識について
インフルエンザ桿菌B型(Hib)
10〜20年前まで、細菌性髄膜炎に罹患する乳幼児が多くいました。
Hibワクチンと肺炎球菌ワクチンが日本で定期接種に導入され、罹患者が大幅に減りました。
アメリカでも、Hibワクチンの導入により、Hibが原因とする細菌性髄膜炎の罹患者、入患者数、死亡数が激減し、大きな効果を示しました。
細菌性髄膜炎の他にも、急性喉頭蓋炎などの重症細菌感染症の原因になります。
また、小児の肺炎や急性中耳炎の原因となる代表的な細菌の一つになります。
抗生剤での治療が可能ですが、ワクチンでの予防も大きな対策になります。
以下の記事では、インフルエンザ桿菌B型(Hib)についてさらに詳しく紹介しています。
ぜひご覧ください。
▶︎インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)について
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの効果
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンを接種することで、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、インフルエンザ桿菌B型の感染・発症を予防することができます。
第1期で3回接種を受け、第1期追加接種として4回ワクチンを受けることによって、感染防護、発症予防に十分な免疫を獲得することができます。
長期的な免疫効果を継続させるために、第2期の追加接種を受けることが望ましいです。
ただ、百日咳の成分が含まれていないDTワクチンを使用しておリます。
海外では、小学校入学前と10〜12歳ごろに追加接種を行っております。
DPTワクチンやTdapワクチン(思春期・成人用の三種混合ワクチン)での5回目と6回目の追加接種の導入が、今後の課題になっています。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種時期や回数は?
ここからは、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種時期・回数について解説していきます。
第1期
生後2か月から接種を開始して合計4回の接種を行います。
- 生後2か月から、4週間の間隔で3回接種
- 3回目の12~18か月後(約1年後)に4回目の接種
というスケジュールでの接種となります。
定期接種の対象範囲は生後90か月(7歳半)までです。
初回から3回目までの接種は、8週間あいても構いません。
米国では生後2か月から開始して、2か月の間隔で接種しています。
五種混合ワクチンの4回目をどのタイミングで接種するかは、いくつかの意見があります。
Hib感染症対策の観点では、1歳前半での接種を勧める考えや、百日咳感染症の対策においては、3回目から1年以上の間隔をあける方が良いとの考えがあります。
海外では、ヒブワクチンは2歳以上で接種回数が少ない時の追加接種は勧奨されていません。
Hib感染症による重症細菌感染症のリスクが減り、自然感染での免疫獲得が期待されます。
また、百日咳感染の対策においては、5〜6歳と、10歳前後に、5回目と6回目のDPTまたはTdapでの追加接種が定期接種としてスケジュールされています。
日本ではこの議論が20年以上行われていますが、まだ定期接種化されていません。
長期免疫を獲得するためには、1年以上の間隔をあける方が好ましいと考えて、当院では1歳6か月ごろを目安に接種を計画しています。
第2期
11歳から二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風)を1回接種します。
米国や欧州では、小学校入学前と10歳前後に、追加接種が行われます。
小学校入学前の接種ではDPTワクチンを使用し、10歳の時の接種は、Tdapワクチンを用います。
TdapワクチンはDTワクチンの量を減らし、百日咳の成分の量を変えない成分構成になります。
DTワクチンはアレルギー反応が出やすい事例があり、接種量を0.1mlに減らして使用されています。
日本では、任意接種として、二種混合ワクチンの代わりに三種混合(DPT)ワクチンを接種することもできます。
10歳以上の年齢層に接種しても、大きな副作用の事例がなかったことから接種が可能とされています。
ポリオワクチンは4回の接種になりますが、米国では多人種社会のため、海外からの輸入感染のリスクが高いです。
そのために、学校等での患者発生を防ぐ目的で、0歳代に2回の接種、1歳代に1回の接種、4〜6歳の就学前に1回の接種が行われています。
日本では、DPT-IPVワクチンは4回までの接種となっていることから、1期追加接種まで完了した人への5回目の接種はDPTワクチンを使用することになります。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン接種後の注意点
ここからは、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン接種後の注意点について解説していきます。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン接種直後の注意点
一般的な接種後の注意と同様に、注射を打った後30分間は、急な副反応が出る場合があります。
そのため、お子さまの様子をしっかり観察し、院内で休んでから帰宅されるか、医師と連絡が取れるようにしておきましょう。
【接種当日に避けるべきこと】
- 激しい運動は控えましょう。
- 接種部位を強くもんだり、こすったりしないようにしてください。
- 接種当日は、通常通りの生活を送っていただいて構いません。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン接種後数日の注意点
ワクチン接種後には以下のような副反応が出ることがあります。
- 接種部位が赤くなる
- 腫れる
- 痛む
- 発熱
- 倦怠感
一般的には、2~3日で軽快します。
接種後1週間は副反応の観察期間になりますが、肘の関節や肩にまで広がる程度の強い腫脹の場合は、冷やしたり、かかりつけ医を受診するようにしてください。
稀に、重大な副反応として、アナフィラキシー、ショック、血小板減少性紫斑病、脳炎、けいれんなどがの報告があります。
しかし、因果関係は不明です。
上記のような症状が出た場合には、速やかに接種した医師の診察を受けてください。
筋肉注射ができるようになりました
今回発売された五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンは筋肉注射が出来るようになりました。
海外では筋肉注射が一般的に行われています。
その方が、効果が高くなり、接種部位の腫脹等の副作用も目立たなくなるメリットがあります。
接種部位は、肩の筋肉か、大腿部の筋肉への接種になります。
乳児〜1歳の子は、肩の筋肉がまだ小さいため大腿部に接種となります。
足への接種が慣れていない子は戸惑うかもしれません。
出血することがあり、接種後に圧迫止血をすること、止血の確認をすることに注意が必要になります。
二種混合(DT)ワクチン・三種混合(DPT)ワクチンとは?
二種混合(DT)ワクチンとは、ジフテリアと破傷風を予防することができるワクチンです。
三種混合(DPT)ワクチンとは、ジフテリア、破傷風に加えて百日咳の予防ができるワクチンです。
近年、百日咳にかかる子どもが増加してきており、海外では、4〜6歳の就学前と、10歳ごろ(日本での二種混合ワクチンの接種時期)に三種混合ワクチンを接種するようになっています。
しかし、日本では第二期に定期接種するワクチンは二種混合ワクチンです。
任意で三種混合ワクチンに変更することもできますが、多くの方が定期接種として二種混合ワクチンを受けています。
そのため日本には、百日咳に対する免疫を十分に獲得できていない方が多くいます。
百日咳予防のために、小学校入学前に三種混合(DPT)ワクチンを任意接種で受けられることをお勧めします。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン
2024年4月に、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンが定期接種として使用できるようになりました。
生後2か月から百日咳の免疫を誘導出来る事や、同時接種するワクチンの本数を減らすことが可能になります。
乳児期早期から百日咳から守ることが大切なので、生後2か月からDPTの成分の入ったワクチンが使用できることは重要なことです。
また、海外では、妊婦にDPTを接種して母体の免疫を高めて、生まれてくる新生児を百日咳から守るために接種が行われています(cocoon vaccination:繭のように守る)。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの費用について
接種日当日に、生後2か月から90か月(7歳6か月)の方であれば、接種費用の自己負担はありません。
第2期の二種混合ワクチンのかわりに三種混合ワクチンを受けた場合には、自己負担となります。
年長の時に、DPTワクチンを希望される場合は、任意接種で自己負担になります。
三種混合ワクチンの費用は、当院では6,600円(税込)になっております。
五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種はこちら
もりのぶ小児科では、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンの接種を行っています。
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五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンまとめ
ここまで、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンについてご紹介してきました。
この記事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2024年10月更新
参考資料:2020年予防接種に関するQ&A集 岡部信彦、多屋馨子 一般社団法人 日本ワクチン産業協会